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細胞機能制御のための圧電駆動型マイクロ細胞培養デバイス


 ティッシュエンジニアリング(組織工学)や遺伝子工学の発展とともに再生医療や遺伝子治療などの高度先進医療への 期待が益々高まっています.特に,受精卵由来ではない組織幹細胞を使った人工的な組織・臓器の再建や遺伝子を 患部に注入して器官などを再生する技術は21世紀の医療におけるキーテクノロジーに発展するものと期待されています. しかし,現状では細胞増殖の促進や分化を誘導するためには,由来が問題となる液性因子や合成高分子物質などの使用を 必要とし,病因性や安全性などの観点から問題を引き起こす要因を多分に含んでいます.このため,安全,かつ細胞増殖能が 高い培養法の開発が望まれています.一方,細胞にナノメートルオーダの微小な機械的振動刺激を与えることで, 細胞の接着・増殖・分化の促進や遺伝子導入の効率化が図れることが示唆されています.しかし,細胞機能制御に及ぼす 振幅と周波数の影響や細胞個体間での効果の違いなどの詳細については明らかとなっていません. そこで,機械的なナノ振動刺激が細胞に及ぼす影響を効率的に解析可能なツールとして, “圧電駆動型マイクロ細胞培養デバイス”の開発を行っています.図1に提案するデバイスの概要を示します.シリコン(Si) 基板上に複数のマイクロチャンバーを形成し,その底面部をシリコン窒化膜(Si3N4)のダイアフラム (寸法100×100~200×200μm2,厚さ1μm)とし,さらに,アクチュエータとしてPZT圧電薄膜(厚さ1μm)を 形成したものです.マイクロチャンバー内に細胞を導入し,PZT圧電薄膜を伸縮させてダイアフラムを上下に振動させることで, 細胞を直接加振することができます.また,個々のマイクロチャンバーは独立して制御可能となるため, 複数の振動条件(振幅,周波数)を1つのデバイス上で同時に実現することができます.このため,細胞機能制御に及ぼす 機械的ナノ振動刺激の影響を短時間で網羅的に解析(ハイスループットスクリーニング)することができます. 図2に作製したデバイスの一例を示します.Si基板(20×20mm2)に形成した16個のマイクロチャンバーの底面部に PZTアクチュエータが形成されています.マイクロチャンバー内に培養液(MEM+10%FBS)を導入した場合でも, 要求性能(最大振幅100nm程度,応答周波数1Hz~10kHz)を満足するデバイスの駆動特性が得られました. また,マウス胎児線維芽細胞(MEF)に対して,インキュベータ内(温度37oC,湿度100%, CO2濃度5%)で1hの振動刺激(周波数10kHz,振幅50nm)を付与した後,再びインキュベータ内で48hの培養を 行った結果,振動を付加した場合のみで細胞の接着が確認でき,デバイスの有効性が実証できました. 今後は,様々な細胞を用いた培養実験を行い,機械的ナノ振動刺激による細胞機能制御の可能を明らかにしていきます.


図1 圧電駆動型マイクロ細胞培養デバイスの概略図


図2 圧電駆動型マイクロ細胞培養デバイスの作製例




関連論文:

[1] T. Kawashima et al., Proceedings MicroTAS 2010 conference, Groningen, The Netherlands, pp.301-303, 2010.


共同研究先:

 茨城大学  増澤 徹 教授

 東京医科歯科大学  岸田晶夫 教授,木村 剛 助教