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細胞形態イメージングのための
多点同時計測イオンコンダクタンス顕微鏡


 生体組織の構築・機能発現の最も基本的な単位である細胞の機能を解明することは, 将来の医療・医薬分野の発展のためには重要な課題です.組織構築・機能発現の過程において細胞は, 増殖・遊走・分化といった挙動を繰り返すことから,細胞の形態をイメージングすることが重要となってきます. 近年,培養環境下(液中)において細胞の形態をイメージングすることを可能とする技術として 走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)が,細胞工学の分野などにおいて注目を集めていますが, イオン電流を計測する走査プローブとしては電解質溶液を満たしたガラスピペットが用いられており, 多数の細胞の形態変化を取得するためには,走査プローブのアレイ化が必須となります. そこで,本研究では,MEMS技術を用いて中空構造を有した酸化シリコン(SiO2)製の ナノニードルアレイを作製して走査プローブとして用いることで, 多数の細胞の形態変化を同時にイメージング可能な多点同時計測イオンコンダクタンス顕微鏡の開発を行っています. SICMの測定空間分解能は,プローブ先端の開口径によって決定されるため,ナノメートルオーダの先端開口径を有する ニードルの開発が必要となります.まず,多点同時計測に向けた測定性能の評価を行いました. ドリフトやノイズの影響を小さくするため,走査プローブを励振させて変調(距離変調)する方式で HeLa細胞(ヒト子宮頸がん由来細胞)のイメージングを試みました.走査プローブとしては, 内径400 nmのガラスピペットを用い,ピエゾステージによってピペットを励振(100 Hz,振幅100 nm)させ, NaCl水溶液中で実験を行いました.計測時の光学顕微鏡像を図1左に示します.走査範囲を20 × 40 μmとして 走査ピッチ2 μmにてイメージングを行った結果,HeLa細胞の形態をイメージング可能であることを示しました(図1右). 次に,走査プローブのアレイ化に向けて,隣接させたガラスピペット間(先端間距離:140 μm)の クロストークについての調査を行ったところ,その影響は観察されず,本手法が多点計測にも 適用可能であることがわかっています.次に,中空構造を有した酸化シリコン(SiO2)製ナノニードルアレイの 作製を行いました.作製プロセスとしては,電子ビーム(EB)リソグラフィおよびSiの深堀りエッチング(DRIE)を 用いています.図2左にナノニードル部の作製プロセスのみを実施した結果を示しますが,SiO2製 ナノニードルをアレイ(内径:720 nm,外径:970 nm,露出部長さ:6.6 μm,ピッチ:5 μm)にて 作製可能であることが分かりました.そこで,基板の両面からDRIEを行なうことで, 中空構造を有したSiO2製ナノニードルアレイの作製を行いました. その結果,高さ3.7 μm,先端内径0.7 μm,先端外径0.8 μmのナノニードル部を有したSiO2製 中空ナノニードルアレイが作製可能であることを示しました(図2右). 今後は,開発しているナノニードルアレイを用いて多数の細胞に対する多点同時計測の実現を目指します.


図1 培養液中でのHeLa細胞(左図)に対する細胞形態のイメージング結果(右図)


図2 アレイ化したナノニードル部(左図)と
中空構造を有したSiO2製ナノニードルアレイの作製例(右図)




共同研究先:

 弘前大学  牧野英司 教授

 山形大学  峯田 貴 教授