オンチップ細胞サージェリーシステムのための細胞穿刺用マイクロニードルアレイ

オンチップ細胞サージェリーシステムのための細胞穿刺用マイクロニードルアレイ

細胞レベルでの高度な手術的操作(細胞サージェリー)を行い,単一細胞への生体分子(DNA,mRNA,タンパク質など)の 注入や細胞内で発現した極微量の物質(tRNA,タンパク質など)を高精度に採取するための“細胞穿刺用ナノニードルアレイ” の開発を行っています.図1は,MEMS技術によって作製した中空構造を有するSiO2製の 先鋭化マイクロニードルアレイの一例です.Siの深堀エッチング(DRIE)と熱酸化を組み合わせたプロセスによって 作製されており,ピッチ17μmでアレイ状(35万本/cm2)に均一に形成されています.

根元部分の直径は 7.5μm(SiO2厚さ1μm),長さは55μmであり,ニードル先端径は1μmまで先鋭化されており, 直径0.2μmの開口を有しています.このような先鋭化ニードルを用いることで,細胞へ穿刺する際のダメージを 極力低減することができると期待されます.また,アレイ状に形成した先鋭化ニードルを用いることで,多数の細胞への 超並列操作が可能になることを意味しています.しかし,直径10μmの細胞の容積(球と仮定)は わずか5.24×10-13 L(524 fL)であるため,ポンプなどを用いた圧力制御によって細胞へ高精度に 液体を注入することは困難です.そこで,電場駆動力を利用することで技術的ブレークスルーが図れることを見出しました. 図2にガラスピペット(先端内径0.7μm,外径1.0μm)を用いた原理検証実験の結果を示します.ピペット内に挿入した電極と 培養容器内に配置した電極間に直流電圧を印加した状態で細胞に穿刺したところ,蛍光色素の導入に成功しました. 

また,この技術を利用することで,細胞へのDNAの導入も行えることを確認しており, 今後は,様々な生体分子(DNA,タンパク質など)の高精度なデリバリー技術としての確立を目指します.

図1 中空構造を有する先鋭化ナノニードルアレイ

図2 生細胞(HeLa細胞)への蛍光色素の極微量注入


関連論文:

[1] N. Kato et al., Jpn. J. Appl. Phys., 50 (6), 067202 (6pp), 2011.
[2] T. Kawashima et al., J. Micro/Nanolith. MEMS MOEMS, 8 (3), 033014 (7pp),2009.
[3]柴田 ほか,精密工学会誌,72 (12),? pp.1520-1524, 2006.

共同研究先:
東京医科歯科大学  岸田晶夫 教授,木村 剛 助教
弘前大学  牧野英司 教授
山形大学  峯田 貴 教授